Bad Habits - Ed Sheeran / 2時を過ぎたら何も起こらない

エド・シーランの新曲が、最強に共感できる夜遊びソングだった件。

f:id:megofthedead:20210711004304j:plain

ざっくりいうと、「オールして家に帰ったあとの罪悪感」が詰め込まれた、切なくて懐かしさを感じるダンスミュージック。

ミュージックビデオも、「夜になったら出てきて朝には消えていく」、ナイトアウトの人たちのメタファーとしてヴァンパイアが使われた、エド・シーランらしくない(個人の感想)ビジュアルで面白い。本人も「こんな格好するの初めてw」って言ってるしw

 

明日には消える人々との空虚な出会いの楽しさ

My bad habits lead to late nights ending alone
Conversations with a stranger I barely know
Swearing this will be the last, but it probably won’t
I’ve got nothing left to lose, or use, or do
My bad habits lead to wide eyes stare into space
And I know I lose control of the things that I say
I was looking for a way out, now I can’t escape
Nothing happens after two
It’s true it’s true
My bad habits lead to you

 

悪い癖のせいで、結局夜中に1人ぼっちになって終わる
ほとんどよく知らない人会話なんかして
これが最後って誓うけど、でもきっとまたやってしまう
失うものも、利用するものも、することすら残ってないから
悪い癖のせいで、虚をただ見つめて
発する言葉もコントロールできなくなって
出口を探してたはずなのに、逃げられなくなって
2時を過ぎたら何も起こらない
本当だよ
この悪い癖の行きつく先は君

確かにもう夜中2時を過ぎたら泥酔して記憶もほとんどなくって、とりあえず朝になるまで飲んで踊って、知らない人と意気投合してその人の家でまた飲みなおして。でももう酔ってるから何を言ってるかもわからないし、自分でもわけわからないことばっか言い始めて。時々謎にぼーっと虚を見つめて。明け方に気持ち悪くなって後悔し始めて、家にやっとついたらなんとか化粧だけ落としてベッドのなかにもぐりこむ。目覚めたら、また日常に戻ってく。

MVの途中「いつもの」エドが車から飛び出してくるけど、風船みたいにしぼんでいくのは「もうやめとけ」っていう自分からのストップサインを見逃す瞬間なんだろう。ヴァンパイアたちが夜明けとともに消えてなくなっちゃうのは、もう二度と会うことのない人たちで、自分の中では消え去ってるのと同じだから。最後のエドが"普通の"エドに戻っていくのは、wasted(※)な状態からもとに戻っていく様子を表しているのかな。

※アルコールやドラッグに完全にやられちゃってる状況

 

いつになったらやめられる?

昔から飲み会を1次会で帰れた試しがない私は、まさに歌詞通り「ノーとは言えなくなって、夜に身を委ねて」しまう。

Falling over everything to reach the first times spark
Started under neon lights then it all got dark
I only know how to go too far

初めてのときめきを求めてなんども失敗して
ネオンの下で始まったはずなのにもうすべて真っ暗
「やりすぎ」以外の方法を知らなくて

We took the long way round
And burned til the fun ran out


僕らは遠回りをして
楽しさが底をつくまで燃え続ける

日本語に訳すとなんだか良さが損なわれてしまった気がするけど(もしくは自分の翻訳技術不足)、この「楽しさが底をつくまで」と「やりすぎ以外の方法をしらない」っていう歌詞がとてもグっときた。

もう途中から理性も正常な思考能力もないから、自分を止めることも出来なくて、もう行くとこまでいって現実から強制終了されないと終われない。

毎回そんな状態になるまで泥酔したことを後悔するんだけど、同時にそのバカなことをしている感覚が快感でもあるんだよな。「酔ってるから」っていう免罪符で、翌朝には後悔するようなことを出来てしまう解放感。あと、もう二度と会わない人とだから出来ること、話せることもあるよね。

もう30歳も超えたし、そんなBad Habits(悪い癖)やめなきゃなって思うけど、1歳年下のエドが似たような気持の曲を歌ってることで安心した笑

…と思ったらライブ動画のインタビューで「父親になってから悪い癖を止めて健康に暮らしてるよ」って言ってるからもうエドはこっち側の人じゃないのかもw

Behind Her Eyes / 瞳の奥に

Behind Her Eyes | Netflix Official Site

シングルマザーと精神科医、そして彼の少しおかしな妻の、世にも奇妙な三角関係。

シングルマザーのルイーズは、友達に予定をすっぽかされ一人で入ったバーでデイヴィッドという魅力的な男性と出会い、意気投合する。彼との出会いに浮かれるルイーズだったが、なんと彼は職場の新しい上司で、しかも既婚者だった。気持ちを諦めようとするも、ずるずると不倫関係に陥っていく二人。そのうえルイーズはデイヴィッドの妻アデルとも友人関係になってしまい、さらに関係がこじれていく。

原作の小説が発売された際、その衝撃的なエンディングから、 Twitterで #WTFthatending (なにあのエンディング!?)というハッシュタグとともにトレンド入りした作品の実写化ミニドラマシリーズです。作者自身も“マーマイト本(※)”と称するほど好き嫌いが分かれる作品で、またもや #WTFthatendingというハッシュタグとともに評判になっています。

※マーマイトはイギリスのちょっと変わった発酵食品。その味が好き嫌いハッキリわかれることから、好き嫌いが分かれる物事について表す言葉としても使われます。マーマイトのスローガンも同様の意味の「Love It Or Hate It」なのもなんかオシャレですよね。ちなみに私も食べたことありますが、食べられるけどあんまりおいしくないな…って感じだった記憶だけはあります。またトライしてみたいなぁ。

 

感想

最初はただの不倫モノなのかなと思って見始めていたのに、物語がどんどん奇妙にねじれていき、気づいたころには3人の関係の決着が気になってイッキ見してしまうこと必至。2~3日で見終えてしまいました。作者曰く「ヒントは作中にちゃんと隠されている」ということなのですが、正直私は「いやこんなオチ読めないわ!」と苦笑するしかなかったです。このオチを読める人はいるんでしょうか? 相当細部まで注意深く見ている人だと思います。

最終話を観たときにはなんともいえないイヤ~な気持ちに包まれ、しかしさらに真実が明かされたあとには、敵(?)ながらあっぱれという謎の満足感でいっぱいでした。1話60分未満で6話完結とサクっとみられる作品なので、一風変わったドラマが見たい!というひとにはぜひオススメです。観終わった後、誰かと語りたくなること間違いなし。私も誰かと話したいので、みんな観てください。マジで。

 

ちなみに作者はそんなオチについてUKNetflixのYouTubeチャンネルで、

「エンディングが大嫌いだって人もいれば、大好きな人もいるのは分かってる。でも『エンディングを(考えられなくて)途中で投げ出してる』って言われるのはムカつく。実際には、私はちゃんと最初からオチまで考えて作ったのに。嫌いな人がいるのは構わないけど、『あんな終わり方なんて予測できるわけない』って言われると、『ちゃんと読み返してみてよ。ヒントはすべて作中にあるから』って言いたくなる」

とコメントしてます。まさに私はその「こんなオチ読めるか!!」の一人でした。ごめんなさい。

主要キャラを演じたルイーズ役のシモーナ・ブラウンやロブ役のリチャード・アラマヨなども素晴らしかったのですが、特にイヴ・ヒューソンは(原作は未読なんですが)少し陰のある妖艶な女性であるアデル役にぴったりだったなと思いました。彼女にまつわる謎が軸になっていく作品なので、彼女に説得力がないと物語の没入感も半減していたと思います。

f:id:megofthedead:20210709005028j:plain

しかもイヴ・ヒューソン、あのアイルランドの有名ロックバンドU2のフロントマン、ボノの娘さんだと知ってビックリ。あまり娘さんたちのニュースを聞いたことないなと思ったんですが、彼女の母親はイヴ達がいわゆる「普通の生活」を送れるようにかなり努力していたようです。イヴ自身も、パパラッチがいるロンドンやLAなどで育つより、名声に興味のない人が多いアイルランドで育ててラッキーだったと語っています。

個人的にあまり見たことのない俳優さんばかりだったのも、物語に入り込みやすかった理由の一つだと思いました。観たことある俳優だとやっぱり「あ、これ××の人だ!」って意識が邪魔するので。

 

余談:スコットランドアクセント

スコットランド人の「デイヴィッド」と「ロブ」を演じているトム・ベイトマンとロバート・アラマヨは、どちらもイングランド出身の俳優。スコットランドアクセントは2人のナチュラルなアクセントではありません。私は2人もガチでスコットランドの俳優だと思ってたので、実際は違うと知ってめちゃくちゃ驚きました。

スコットランドの人からは特にトムのアクセントは「ひどい」と一部で酷評されているようです(褒めている人もいますよ!)。スコットランド出身の俳優もたくさんいるのに、なぜわざわざイングランドの俳優を使うのか?という点も問題になっているみたいですね。

 

以下、追記で 瞳の奥にネタバレ感想
※ネタバレを含みます!まだ観てない人・原作を読んでないけど読みたい人などは見ないでください!

 

続きを読む

Euphoria Season1 / ユーフォリア シーズン1

f:id:megofthedead:20210708135532p:plain

薬物依存症のルー、トランスジェンダーの転校生ジュールズ、オンラインポルノで金を稼ぐカット、クソ男の彼氏と完全に切れないマディー。A24とHBO共同制作、ドレイク製作総指揮の、現代を生きるZ世代のダークでドロドロした青春ドラマ。

U-NEXTで配信開始したのでやっと見れました。全8話なのでサクっと完走。
主軸の話+1話ごとに1人のキャラを掘り下げるスタイルだったから1人1人に感情移入しやすいのも良かった。

 

さすがはA24×HBO作品

「A24の映画なら」「HBOのドラマなら」と信頼を置く人の多いヒットメーカー同士が組んで制作しただけあって、全8話ながら内容は濃く、満足感のあるシリーズだった。

Z世代が直面する問題をうまく取り込みつつエンタメに消化していて、まさに「現代の」青春ドラマ。私はミレニアル世代でZ世代より1個前にあたるんだけど、10代のころから携帯やネットが身近にあったとはいえ、現代の子への影響は比べ物にならないな…

決して明るい気持ちにはなれないし後味も悪かったりするんだけど、シーズン2もぜひ追いかけたいなって思える作品でした。

 

キャラクターについて

正直いわゆるジョックスカースト上位の男子でたいていクソ野郎)であるネイトとその彼女のキャラクターに関してはすごくテンプレっぽいというか、よく見る「フィクションのキャラ」って感じなんだけど、他の子たちは全体的にリアルで良かった。

「楽にお金を稼げる」「自分の魅力を実感させてくれた」って安易にCam Girl(性的な配信や動画投稿を行う)に流れちゃう女の子とか、好きな人のためにヌード写真を撮っちゃう女の子とか、どうしようもない相手なのに別れられない女の子とか。客観的に考えれば「そんなことしちゃダメだよ」って言えるけど、彼女たちがそんな行動に走る気持ちもわかるからもどかしい。

Image

ちなみに私が好きなキャラは、「恋愛に興味はあるけど無縁」なレクシーと、主人公のルーの兄的存在でStonerなフェズと彼の弟君です。

 

余談: 10代の脳は未完成

最近「スマホ脳」という本を読んだんだけど、こんな感じのことが書かれていて。

「脳の衝動を制御する部分は10代ではまだ未完成なので、スマホのようなすぐに欲望を満たしてくれるもの、また欲望を生み出すものに依存しやすい。若者のほうが依存症リスクが高く、未成年の飲酒や喫煙が規制されているのもそのため。また、ドーパミンの増減も激しいので、興奮や落ち込みといった感情の振れ幅も大きく、激しく興奮しているときには危険を冒す。」

これを踏まえれば、10代の子たちがドラッグにハマったり、大人からすれば「向こう見ず」な行動をとるのも分かる。脳は常に新しい刺激を追い求める性質を持っていて、しかも良きところでそれを止めてくれる部分もまだ発達しきっていないのだから。

Image

Template by kewpiedesign
Icons made by Freepik from flaticon and Icons8